SHUHEI HATANO
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  • 水道橋駅の立ち食い蕎麦屋で

    07.12.2025

     前回のブログで盗み聞きした会話について書いたので、今回も記憶に鮮明に焼き付いて離れない盗み聞きした会話を記したいと思う。盗み聞きと言うと人聞きが悪いかもしれないが、どうにも聞き逃せなかった味わい深い会話として皆様にも聞いてもらえればこれ幸いである。

     スマホの中も年末の大掃除を始めている。メモアプリに大量に残された走り書きにその会話は残されている。削除する前にこちらに転載し成仏させようと思う。時はちょうど3年前の2022年の師走、処は飯田橋駅の立ち食い蕎麦屋。

     お昼もずいぶん過ぎた頃に用事を終えて逃していた昼飯にと水道橋駅改札出てすぐの立ち食い蕎麦屋の暖簾をくぐる。立ち食い蕎麦といっても壁沿いには椅子があり、そこに座してかき揚げうどんを待つ。西で生まれ育った私には蕎麦は馴染みのない食べ物であった。蕎麦を食べるのは年に一度の年越し蕎麦のみ。日頃すする麺といえばもっぱらうどんであった。その名残りか東京に居を移してもうどんをよく食べる。はじめはそのどす黒い汁に辟易したものだったが今となってはその黒汁にかき揚げをどぶと浸け崩し、うどんと一緒にすするのがこの上ない喜びとなっている。しかし東京でうどんを頼むのにはなかなか度胸を要する。時間を惜しむサラリーマンで雑踏するカウンターで次々と注文される蕎麦の群れに迅速に対応する滑らかな流れの中に、楔を打つようにひとりうどんを差し挟むのは店内に湯気と共に醸成されたグルーヴを乱している感が否めない。加えてうどんは蕎麦のようにさっと湯通しすればよいというのではなく、しばし湯につけて待たねばならずひとりカウンター脇に避難してできあがりを待つためここでもまた店内グルーヴを乱してしまう。そして何より店の暖簾には蕎麦と銘打たれている。その日も針のむしろに座した気分でうどんを待っていた。すると聞こえてくるのは齢20半ばのふたりの令嬢の雑談。遅い午後のため人が多いとは言わないが、よそ様のことなど全く意に介さず臆することなく離れたところからでもはっきりと聞こえてくる声。

     「友だちのあれが不順で」
     「あー、ストレスと過労で一発で狂うからね。痩せてんの?」
     「いや普通。8ヶ月来なかったから病院行ったらバチボコ怒られて」
     「当たり前体操〜!いや普通子供できたんじゃないかって不安になるでしょ」
     「でも妊娠のためのイベントやってないから。食生活が乱れてんだよね、1日1食だから」
     「あー痩せはしないけど、栄養は足りずってやつね。まじ頭痛いわ。話題変えね?」
     「そうそう、その子頭痛いんだよね」
     「いや、私のこと。あーまじ頭痛くなってきた」
     「気圧?」
     「気圧」
     と立ち上がりどんぶりをカウンターに下げてスマホをいじりながら店を出て行くふたり
     「実家の天気見たら、雨雪雨雪だって、まじ辛、かわいそ〜」ガラガラ、ピシャン。

     はじめはうどんをすすりながら何気なく聞いていた会話だったが、「バチボコ」という言葉をフックに、抑揚に富んだ「当たり前体操〜!」で一気に相手の間合いに引き込まれ、うどんをつまむ箸を止めて聞き入るとそこへ、「妊娠のためのイベント」という男女のねんごろを表現した未だかつて聞いたことのないパンチラインに打ちのめされ、危うくマウスピースではなくうどんを撒き散らすところをすんでのところで持ち堪えた。そして正月の帰省のためか実家の天気を心配するエピローグにはなんとも心温まる人情噺の趣さえあるではないか。

     こうして急いでスマホにメモを取るはめになったわけだか、それにしてもまだ見ぬ活の良い言葉というものは、いつも唐突にごろんと路上に転がっているものだなあと感慨に浸りひたひたのかき揚げを頬張ったのであった。ごちそうさまでした。

  • 山形国際ドキュメンタリー映画祭2023の思い出 | フィルムライブラリー

    03.12.2025

     映画祭を一日休み、バスに乗って山形ドキュメンタリーフィルムライブラリーを訪れた。ここは過去に山形国際ドキュメンタリー映画祭に出品された2万本近くの映画を見ることができる施設だ。それも驚くことに無料で。映画祭に選ばれた作品だけでなく、出品された作品というのがおもしろい。だから2021年の映画祭で日本プログラムに選ばれた自作『私はおぼえている』も見られるが、コンペに落選した『影の由来』もここでは見られる。今の所、公の場所でこの二作が見られるのはここだけだ。

     フィルムライブラリーを訪れた理由は、ロバート・クレイマー監督『ルート1』を見るためだった。上映時間4時間15分のこの映画を一日かけてじっくり見ようと思っていた。
     ロバート・クレイマーを知ったのは座・高円寺ドキュメンタリー映画祭で、諏訪敦彦監督がセレクションしたクレイマーの『アイス』を見た時で、16ミリフィルムでの上映だった。しかし作品のことはほとんど覚えていない。それよりも諏訪監督が語るクレイマーとの思い出の方が印象に残っている。それは諏訪監督の故郷広島をクレイマーもいつか撮りたいと思っていたという話だった。おそらく諏訪監督が、広島を題材に映画を作ろうとしている時のことだったと思う。クレイマーが広島を撮りたかったのは、父親が太平洋戦争に従軍していたことも関係していたような気がするが、この辺りの記憶はおぼろげだ。それよりも話の最後に「子供を育てながら映画を作るのは非常に大変なことだが、お互いにがんばろうと励まし合いました」と言われたのをはっきりと覚えている。そしてその後、諏訪監督は『H Story』で広島を映画にし、次の『不完全なふたり』で夫婦を、その次の『ユキとニナ」で子供を撮った。そのフィルモグラフィーはいつもその時の監督の人生が投影されていたのではないかと想像する。今父親となった自分は、ふたりが子育てをしながらどう映画制作と向き合っていたのか、その時交わした会話を聞いてみたいと強く思う。

     『ルート1』の前半を見終え、2枚目のDVDを見始めた時、ライブラリーの貸し出しカウンターから話し声が聞こえてくる。声の主の老齢の男性は興奮気味で、ヘッドフォン越しにもその会話は筒抜けである。
     「たまげたなあ、12回も繰り返し見せられるんだものなあ、ほんとたんまげた」と、DVDを止めてその感嘆の声に耳を澄ませると、どうやら映画祭で特集上映されている映画作家、野田真吉の『ふたりの長距離ランナーの孤独』について話しているようだった。その映画は1964年の東京オリンピックの男子マラソンで、歩道の一般男性が乱入してアベベ選手と並走し、やがて取り押さえられるまでの10秒ほどのニュース映像を、フリージャズの劇番を伴って繰り返し繰り返し繰り返すだけの映画だった。その繰り返しが12回かどうかは定かではないが、おそらくいわゆる実験映画を見慣れない男性には珍奇なものとして、心底肝を潰すたまげた映画として映ったのだろう。そして男性はさらに興奮を上乗せして続ける。
     「でもなあ、次の日に盆踊りの映画を見て気づいたんだ」と、肝を潰されながらもひるまず翌日も野田真吉の特集上映に足を運んだその心意気に感心しながら盗み聞きを続けていると、大興奮しながらこう捲し立てる。
     「気づいたんだ、盆踊りも繰り返しなんだよ、ずーっとずーっと繰り返してんだよ、同じ節で同じ踊りを繰り返してんだよ」と。
     男性の継いだ言葉に、ほんとたまげたのはこちらの方だった。野田真吉が盆踊りを記録した『生者と死者のかよい路 新野の盆おどり 神送りの行事』と『ふたりの長距離ランナーの孤独』は内容に関連はないし、制作年も30年近く隔たっている。関係のない映画を、繰り返しという一点で力強く連結させてしまうその直感はとても清々しく、思いもよらないものだった。そして野田真吉の作家論のどこにも同様の指摘は見当たらなかった。

     感覚をオープンにして、まずは映画を真に受けること。そうしないと映画を見て、自分の中で更新されたり変容するものなど何もない。『ルート1』の鑑賞を再開しても、盗み聞きした会話がずっと頭を旋回し、映画はあまり入ってこなかった。でも、このお爺さんのお陰で、映画を見るって個人的な感性に従って見るもんだという当たり前のことを思い出し、それだけでフィルムライブラリーを訪れた甲斐があったと思う。
     自分には映画より、映画の周辺のことの方が強く記憶に残るのかもしれない。

  • 山形国際ドキュメンタリー映画祭2023の思い出 | 四方田さんと足立さん

    30.11.2025

     映画祭では著名人を見かけることがある。あ、あの人知ってると思っても、ほとんどは声をかけることはなく遠巻きに見ているだけだが、たまたま袖触れあう距離になり話をすることがある。

     上映が始まるのをシートに座って待っていると、すみませんと前を通り隣に着席する男性。その風態に見覚えがあるなと思い巡らし、思い切って「四方田犬彦さんですか?」と声をかける。ポケットからくしゃくしゃになったメモの端切れをたくさん取り出し、なぐり書きされた暗号のような文字を読んでいる男性は「はい」と返事をした。我ながらよくわかったなと感心しながら、「ブニュエル本の刊行おめでとうございます」と告げる。「欲しいとは思うものの高くてなかなか」と後になって思うと失礼だったかなという言葉を継ぐと、「1日の食事代を抜けば買えますよ」という返事。ドムドムの440円のハンバーガーで1食を済ませようとしている身分の自分には、7000円の大著を買うには1週間食事を抜かなくてはいけない。これは、ブニュエルがいつまでも食事にありつけないブルジョワを描いた晩年の傑作『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』に掛けた冗談なのだろうか。などと思いながら、自作の上映日程を伝え、ぜひ見に来てくださいと告げる。 

     場内が暗くなり、スクリーンが照らし出される。すると四方田さんはぐっとシートに沈み込む。やがて視界の端に捉えていた氏の頭が、どんどん沈み込み消えていく。一体どうなっているんだ、と思わずスクリーンから目を離して横を見ると、四方田さんの背中は背もたれではなく座面と密着して、ほぼ寝転んで星空を見上げるような格好になっている。脚から腰までは、前の座席の下に潜り込ませて、背中と頭だけが座面に乗っている。なんという格好だろうか。そして今まで映画を見てきた中で、こんなにもスクリーンから目を離したことがあっただろうか。四方田さん、それは果たして楽な姿勢なのですか?と思わず聞きたくなるほどに目を疑う、超現実的な光景だった。
     おかげでその時見た映画が何だったのか、一切記憶にない。夢だったのかもしれない。

     映画館の前のベンチで自作の上映までのそわそわした時間を潰していると、隣のベンチに美しい白髪の男性が、若い男性と腰をかける。「足立さん、初めまして」と今回のコンペティションの審査員でもある足立正生さんに声をかける。審査員と話すのは控えた方がいいのかなと思いながらも、聞きたいことがあったので「エリック・ボードレールさんと共作された映画を見ました」と告げ、どうやって作られたのか聞く。
     足立さんはその経歴から渡航制限を受けているそうで、好きなように使ってくれとテキストだけをフランスのエリックさんに送り、やりとりを続けたそうだ。「もっとめちゃくちゃにしろよ、と言ったんだけど案外綺麗にまとまった映画になっちゃって」と自分のスタイルを固めるのではなく壊し続ける姿勢に、見習わなきゃなと拝聴していると、何かがやってきてその美しい真っ白な御髪にピタッと止まる。足立さんは「そしたらあいつがタイトルを『醜い男』にしやがってよ〜」と嬉しそうに話しているが、それどころではない。こちらの全意識は、頭に止まったまま動こうとしないその何かに注がれている。
     「あの、すみません」と楽しそうに話し続ける足立さんを遮って恐る恐る、「頭に赤とんぼが」とその存在を伝える。話を遮られた足立さんは、立腹するかと思いきや、「何?本当か!?」とさらに楽しそうになり、お付きの若者に今すぐ写真を取れと大喜びしている。スマホの写真を確認して、もっとこっちの角度で取れと若者に指図をしている間も、赤とんぼは微動だにしない。日の丸弁当みたいだなと白髪と赤とんぼのコントラストを見ながら思う。あー、日本の国旗みたいだな、と足立さんの経歴を考えると出来すぎた皮肉を体現しているようで、さすが恐れ入りましたと勝手に感心する。俺じゃなく、足立さんを選んだ赤とんぼも分かってるなと。
     やはりスタイルを壊すことを恐れないオープンな姿勢には、思わぬ贈り物が飛び込んでくるんだよなと思い知った邂逅だった。

  • 山形国際ドキュメンタリー映画祭2023の思い出 |ドムドムのクリスピーチキンバーガー

    30.11.2025

     映画祭期間中は1日に4、5本映画を見る。それが1週間続くわけだが、そうなると重要になってくるのはどのタイミングで食事を挟むかということになる。次の上映まで大した時間があるわけではないので、できるだけ簡単に済ませたい。それでいて長時間の鑑賞で消耗した体力も回復したい。そんな欲求を満たしてくれそうなのが上映会場のそばにあるデパート、山交ビル地下のフードエリアで見つけたドムドムハンバーガーだった。ドムドムを見つけたらできるだけ利用するようにしているという個人的な理由もあるが、これならイートインでも時間がかからず、急ぎの時はテイクアウトもできる。パッケージの象(どうむぞうくん)もかわいい。そして安い。こうして今日の昼飯はドムドムのクリスピーチキンバーガー440円にしようと決めた。

     会計を済ませ、どむぞうくんのプリントされた紙袋を受け取り、上映会場のフォーラム山形を早歩きで目指す。しばらく歩き映画館が近づいてきたところで、「すみませ〜ん」と呼びかける声がする。振り向くと先ほど会計をしてくれた女性が走って追いかけて来る。何事かと身構えながら、いやちゃんと会計は済ませたはずだと思って待っていると、「パンで挟むのを忘れました!」と思いもよらない言葉を投げかけられる。手にしていた紙袋を開けて中をのぞき見ると、クリスピーチキンだけがひとつ入っている。なるほどそういうことかと事態を理解し、そういえば渡された時に何か軽いと思ったんだよなと反芻する。しかしよくこっちの方向にいるとわかりましたねと尋ねると、首から下げた映画祭のゲストパスを見て、もしかしたら映画館の方向かもしれないと勘で走って来ましたと、息を荒げながら教えてくれる。できればお店に戻って、パンで挟んでクリスピーチキンバーガーを完成させたいという強い願望を、息を整えながら伝えてくれる。次の上映までギリギリ間に合いそうなので、申し出を聞き入れることにする。

     「昔、マクドナルドでチーズバーガーをテイクアウトした時に、がぶっとかぶり付いたところイメージしていたより上の歯と下の歯がガチンと早くぶつかって、ん?と思ってよく見ると、ハンバーグが挟んでなかったんですよね。チーズだけが挟んであって、これじゃあチーズパンじゃないかと呆れたんですが、今回はその逆でしたね、わはは。」と談笑しながらお店まで肩を並べて早歩きで向かう。

      女性はもう一度新しくチキンを揚げてパンに挟もうとするので、いやさっきのチキンで全然大丈夫ですよと告げる。内心は時間もあまりないしと思いながら。それではこちらの気がすまないと思ったのか、じゃあせめてこれでと言いながら、女性は特大サイズの紙コップを取り出し、おもむろにメロンソーダを注ぎ始める。いやいや大丈夫です、水筒がありますからとその動作を制御しようとするが、みるみるうちに鮮やかな黄緑色の液体はカップの縁すれすれまで注がれて蓋をされ、ストローを挿し込まれる。サービスですので受け取ってくださいと懇願する女性の厚意を無下にすることはできず、礼を言って受け取る。いざ上映会場へ急ごうと早歩きを始めると、半透明の蓋の下では黄緑色の液体が波打っているのが見えて、とてもじゃないが急ぐことなどできない。むしろいつもより持ち運びに細心の注意が必要で、ゆっくりゆっくり摺り足のように歩いて映画館を目指すはめになる。その道中、これも何かの縁だ、こうなったら明日からの昼飯は、毎日ドムドムのクリスピーチキンバーガーにしようと心に決めた。

  • 選曲集その2|フィクションはもうたくさん

    30.11.2025

    こちらから聞けます。お楽しみください。

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    TRACKLIST (13曲 50分)

    JOSEPHINE FOSTER
    I'm A Dreamer


    STEREOLAB
    Space Moth


    JUANA MOLINA
    Mantra Del Bicho Feo


    中谷美紀
    クロニック・ラヴ [Remix Version]


    GANG GANG DANCE
    First Communion


    LIFE WITHOUT BUILDINGS
    The Leanover


    ARLT
    La Rouille


    MY BLOODY VALENTINE
    Lose My Breath


    二階堂和美
    脈拍


    CHARLOTTE GAINSBOURG
    Heaven Can Wait


    THE RAINCOATS
    No Side To Fall In

    ESSENTIAL LOGIC
    Martian Man


    SLEATER-KINNEY
    Modern Girl

  • 選曲集その1| あの夏の感じ

    30.11.2025

    こちらから聞けます。お楽しみください。

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    TRACKLIST (14曲 50分)

    PAUL SIMON 
    Mother And Child Reunion

    BECK
    Tropicalia

    細野晴臣
    北京ダック

    大友良英
    Painting 1 (Big Band)

    大貫妙子
    くすりをたくさん

    DIRTY PROJECTORS
    Overlord

    WILCO
    Far, Far Away

    サニーデイ・サービス
    江ノ島

    VAN DYKE PARKS
    Bing Crosby

    THE CLASH
    Sandinista!

    THE MORNING BENDERS
    Excuses

    LED ZEPPELIN
    Down By The Seaside

    THE FACES
    Ooh La La

    LITTLE JOY
    Next Time Around

  • NTS Radio お気に入りDJとエピソード

    30.11.2025

     アナログフィッシュの健太郎くんとのドライブ中にどこで新しい音楽に出会ってる?という話になり、音楽のサブスクをやっていない僕は、主にネットラジオのNTSで出会っていると説明した。
     今思うと健太郎くんは、「新しい音楽」という言葉を「新しく発表された音楽」という意味で使ったのかもしれないが、僕はてっきり「自分にとって未知の音楽」という意味だと解釈して説明していた。

     NTSを流して家事をしていることが多い。好きなDJを見つけて最新エピソードが更新されると聞いている。好きなDJを探す手助けは、記載されているジャンルとジャケット写真。エピソードごとのジャケット写真は見ているだけでも楽しく、DJ自らが選んでいるのか選曲センスが現れている気がして重要だと思う。
     NTSを聞いていると、まだまだ世界は知らない音楽で溢れているなと嬉しくなるし、ここは本当に音楽が大好きな人たちで溢れているなと嬉しくなる。音楽は縦横無尽に国境を越えて聞かれている。
     健太郎くんにNTSを紹介したのだけど、その広大な音楽の海に飛び込む前に、取りつく島としていくつか個人的なお気に入りをここで紹介します。


    Naomi Asa

    Naomi AsaNaomi Asa on the NTS airwaves, delivering soothing soul and swww.nts.live

     この人を気に入ったのは最初に聞いたエピソードが良かったからで、ビートルズ『ジュリア』からサイモン&ガーファンクル、ビーチボーイズと馴染み深い選曲で始まって、途中に梶芽衣子を挟む意外な展開がありつつも全体的にメロウな選曲でとても好みでした。後になってこのエピソードが例外的で、他のエピソードはソウルやジャズが多いですが、いずれも共通してメロウ&スウィートで家で聞いていると落ち着けて良いです。

    Naomi Asa 19th March 2023Playing Soul, Classic Rock. Naomi Asa on the NTS airwaves, dewww.nts.live

    Carla Dal Forno

    Carla Dal FornoThe Blackest Ever Black released singer-songwriter Carla Dalwww.nts.live

     メルボルン出身のこの人のおかげでGarbage & The Flowersという自分にとって新しい音楽と出会うことができて感謝しています。特に『Love Comes Slowly Now』は大のお気に入り曲になりました。全体的にアシッドフォークやローファイな選曲が多く、日本のマコメロジーが一曲目を飾るエピソードを見つけた時には、よく知ってるなと唸りました。

    Carla Dal Forno 20th November 2024Playing Folk, Indie Rock, Dream Pop. The Blackest Ever Blackwww.nts.live

    Thea HD

    Thea HDLeaf Label A&R and Odda Recordings label owner Thea HD unwww.nts.live

     リーズ出身のこの方はアンビエントな選曲が多いのでBGMに最適かと思いきや、どの曲も引っかかりがあり聞いていて飽きません。けど刺激的すぎないのでやはり家で流しておくには適しています。というとてもいい塩梅なエピソードばかり。ジャケ写の雄大な自然と選曲がマッチしていると思います。

    Thea HD 15th June 2025Playing Folk, Ambient, Indie Rock. Leaf Label A&R and Oddwww.nts.live

    Angel Olsen

    Cosmic Waves Radio Hour w/ Angel OlsenFollowing the recent release of her compilation & coverswww.nts.live

     DJにはミュージシャンも多く名を連ねていて、 どんな曲が好きなのかを知れるのも楽しいです。このエンジェル・オルセンは3つしかエピソードがないけど、そのいずれも良く、特にこのエピソードが甘美な陶酔感に満ちていて好きです。

    Cosmic Waves Radio Hour w/ Angel Olsen - Neighbors 3rd February 2025Playing Indie Rock, Dream Pop. Following the recent release owww.nts.live

    Joana Molina

     ファナ・モリーナが60〜70年代のアルゼンチンとウルグアイの音楽を中心に、自身の音楽形成に影響を与えた曲をインタビューに答えながら紹介しています。ここで知ったThe Music Machine 『Masculine Intuition』というガレージサイケな曲がとてもかっこいいです。

    Juana Molina: Curated by Matt Groening - NTS 10 23rd April 2021Playing Folk, Psychedelic Rock. Buenos Aires songwriter and gwww.nts.live

    YoshimiO

    YoshimiOYoshimiO, the Japanese multi-instrumentalist and member of Bowww.nts.live

     どのエピソードもヨシミさんらしく土の匂いのするトライバルな曲が多いです。特にこのエピソードは世界の民族音楽シリーズから多く選曲されていて、知らない曲ばかりでおもしろく、そしてどれもかっこいいです。さすがという選曲です。

    YoshimiO 20th May 2024Playing Folk, Psychedelic Rock, Jazz Fusion, Garage Rock. Yoswww.nts.live

    Miss Modular with Sudan Tapes Archive

     スーダン音楽を保存するアーカイブ活動をしている女性にインタビューしながらその音楽を紹介しているエピソードです。スーダン音楽など一曲たりとも知らなかった僕には全てが新しい音楽でした。スーダンの民族音楽だけでなく、スーダンのポップミュージックも紹介されていて、そのどれも良いです。

    Miss Modular w/ Sudan Tapes Archive 8th August 2024Playing Sudanese Folk, Sudanese Pop, Talk. Sasha Ali interviewww.nts.live

    Metamorphosis

    Supporter Radio: MetamorphosisThis spring, NTS invites transitions of all kinds from one stwww.nts.live

     これは一人のDJではなく、いろんなDJによる選曲をメタモルフォーシスというテーマでまとめたシリーズです。その中から特にいいなと感じたエピソードをふたつピックアップします。
     ひとつ目はチュニジアン・ナイーブ・ソサエティによるエピソード。まず「チュニジアの純真な社会」というネーミングセンスが好きです。選曲は全体的にしっとりと落ち着いていて、リラックスして聞けます。2曲目にはレイ・ハラカミが選ばれていて、チュニジアまで届いていてすごいなと思いました。
     ふたつ目のエピソードはスピリチュアライズドから始まり、コクトー・ツインズやビーチ・ハウスなど馴染み深い選曲のものを。休日に何もせず寝転んで聞くとすぐ夢見心地にたどり着けます。

    ON BEHALF OF NATURE W/ Tunisian Naive Society 26th April 2024Playing Electronica, Ambient, Modern Classical. On the edge owww.nts.live
    metamorphosis W/ alexandraxnicole 10th April 2024Playing Shoegaze, Experimental, Dream Pop. songs for life's twww.nts.live

    In Focus

    In FocusA deeper look into the back catalogs of various artists.www.nts.live

     ここはミュージシャンやレコードレーベルごとに特集されたエピソードがまとめられています。本当に縦横無尽に古今東西を飛び回っていて、ひとつひとつを順番に聞いていっても相当に楽しいと思います。そんな中から、ここで知ることができたカンボジアン・ポップスとブルー・ナイルを紹介します。

    In Focus: Ros Serey Sothea 1st September 2023Playing Psychedelic Rock, Khmer Pop. Sixty minutes of soundswww.nts.live
    In Focus: The Blue Nile 2nd August 2024Playing Synth Pop, Leftfield Pop, Art Rock. Like the gold thawww.nts.live

    Donna Leak

    Donna LeakeDive into Donna Leake's ever developing taste, drawing soundswww.nts.live

     最後は今一番好きなDJのドナ・リークの全エピソードで締めます。ほとんどの曲を知りませんが全ての選曲がクールで、こういう人を音楽好きというんだろうなと思います。ぜひ聞いて楽しんでください。


    NTS以外では、中古レコード屋に行って、レコードとCDを買って「新しい音楽」に出会ってます。

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