SHUHEI HATANO
  • Blog
  • Biography | Contact
  • Blog
  • Biography | Contact

日記|2025年10月30日ー11月5日

05.02.2026

10月30日 木曜日

 ー友人の作った映画をVHSテープで見せてもらう。
 主人公の男子高生が川の向こう岸を自転車で走っているのを、カメラはこちら岸からゆっくりと併走しながら撮影している長回しのショット。カメラは途中で橋を渡り、男子高生の自転車と合流し今度は後ろ姿を追いかける。狭い路地に入ったところで信号が赤になり、男子高生が信号待ちをするその間も、カメラはずっと回っている。するとフレーム脇から蕎麦屋の出前のカブが現れ、カメラの真ん前に停車する。男子高生は陰に隠れて見えなくなる。カブの荷台には岡持ちではなく、背丈2メートルほどもある秋明菊の株が載っていて、長い間、画面中央でゆらゆら揺れている時間が続く。それを見ながら、これはシナリオにはないハプニングではないかと思うが、そのことを友人には聞かなかった。
 次のテープをビデオデッキに入れて続きを再生してもらうが、そのテープにはタイトルのラベルもなにも貼ってなく、果たしてちゃんと順番通りに見られているのか定かではない。
 次のテープでは老婆がカメラの正面に座り、長い間使い続けてぺちゃんこになったエナメル加工された赤いクロコダイル皮のハンドバックについて、その思い出を延々と語る長いワンシーンワンショット。そもそも違う映画なのではと疑問に思うほど話が繋がっていないー

 とうとう息子も発熱。妻だけが罹患していないので、家のことと看病を全てやってくれる。

 今日も一日寝込んでいた。解熱剤を飲んだ分だけ体は楽になる。親戚が差し入れてくれたフルーツを食べる。これもゼリーと同じく、病床でしか味わうことのできない格別な味。

 窓の外にまだ小さなシジュウカラがいるのを見つけ、しばらく眺めているとヒヨドリがやってきて、シジュウカラを追い払ってしまうのを一通り眺めながら、なんとも病人らしい時間だと思う。

 娘の吐瀉物を片付ける。病人が病人の世話をする。左の二の腕に発疹が出る。


31日 金曜日

 解熱剤を飲まなくても熱が37度代に治り、いくらか楽になる。

 あまり眠ることもなくなったので、友人が置いていった『闇市』という戦中戦後の闇市が描かれた11編から成る短編集を読む。太宰治、鄭承博、永井荷風、平林たい子、坂口安吾、中里恒子、どの短編に出てくる人物にも胸を打たれたが、特に野坂昭如『浣腸とマリア』の最後の母子の姿に落涙。

 それにしても病に伏している時くらいしか、ゆっくり読書の時間を持てないというのはいかがなものか。病気という非日常時のおかげで、日常では気づかないことにいろいろと気がつくものだ。


11月1日 土曜日

 熱が36度台に治り、だいぶ体が楽になったので、3日ぶりの風呂に入る。久しぶりに鏡の前に立つと、ずっと床に伏していたせいで髪がゴッホの絵の糸杉みたいになっている。この部分だけ重力が働いていないのだろうか。

 久しぶりに掃除など家事を少しだけやり、家の周りを散歩する。しかし動くと体がだるくなり、しばし眠ることにする。

 昨日は何もハロウィンらしいことのない一日だったので、娘が「ハッピーハロウィンをいいつくそう!」と書かれたポスターを掲示し、チケットやお菓子交換場所の地図などを独り言を言いながら作っている。押入れ下段の子供たちの秘密基地スペースに、どうぶつきっ茶店という暖簾も出して、営業も始めている。息子もベッドから起きて、以前のように何かになりきって家の中を駆け回っている。子供たちの回復力の早さに感心する。
 ひと眠りして起きて、子供たちとしばし遊ぶ。
 夕食後、娘が結婚記念日おめでとうと、部屋に活けてあった花を自分なりに組み合わせて花束をくれる。正確には今日は入籍日ではなく、11年前の今日祝言を挙げた。

 夜、インスタのDMにイタリアの映画研究者でキュレーターでもあるヴィンセントという男性から、彼が選考委員に加わっている映画祭に作品を提出してもらえないかという連絡が届いているのに気づく。加えて、過去作も見せてもらいたいと。了承の旨を伝える。


2日 日曜日

 落ちた体力を戻すため、近所を散歩する。
 ピーコックに立ち寄って例のぶどうゼリーを買い、人気のない公園のベンチにひとり座り、今一度じっくりと味を確かめる。なんということのない並のぶどうゼリーに変わっている。

 家に戻り、昼飯に妻が作ってくれていた、志麻さんがテレビで作っていたというポトフを食べる。大根や人参、さつまいもや玉ねぎが切られずにそのまま入っている。それを皆で取り分けて食べる。その美味しさもさることながら、家族で同じ皿のものを食べられるようになったことに日常が戻ってきた感覚を得る。

 午後から家族それぞれ自分の自転車に乗り、4台並んで玉川上水沿いの雑木林の中の道を小平方面へ向かう。途中お茶をしようと思うがなかなか見つけられず、結局病み上がりにもかかわらず1時間半ほど走ることになる。所々黄色く色づいた葉の間から、傾いた日が差す。
 鷹の台駅そばの喫茶シントンに腰を落ち着け、レモンケーキとモカケーキを食べて一息つく。店を出て、隣の呑み屋の軒先で焼き鳥を焼いているおばちゃんに若鶏、つくね、レバーを頼むと、お皿で手渡され、その場で立ち食いするスタイル。国分寺線の車窓の明かりがおばちゃんを照らす。次はお店に一杯やりに来ますと伝え、真っ暗闇の玉川上水沿いを帰る。
 26年前、鷹の台駅隣のセブンイレブンで『Automatic』が流れていて、これが今話題の新人宇多田ヒカルか、と知ったのを思い出す。夕飯はポトフの残りを食べる。


3日 月曜日文化の日

 ー運転席を降りて扉を閉めると水色のランドクルーザーが勝手に走り出し、慌てて追いかけるものの先へ行ってしまう。ダッシュボードに刺さったケーブルが運転席の開いた窓から伸びてヘッドフォンにつながっていてるが、それも引っ張られて頭から外れると、一緒にどんどん先へと行ってしまう。ランドクルーザーに引きずられたヘッドフォンが、逃げ出した犬と長く伸びたリードのようだと思いながら横を見ると、青い大型バスの運転席でインドネシアの小学生4、5人がバカ笑いしながら大きなハンドルを回している。バスの運転手らしき人はいない。するとバスは急発進でバックし始め街の中を突き進むー

 両脇腹に汗疹が出る。

 風が強く、雲が早く流れ、晴れたり曇ったり、時々雨が降ったりしている。

 午前中、みのーれ立川で葉付き大根、人参、白菜、葉付きのかぶ、ブロッコリー、ピーマン、さつまいも、油揚げを買う。蓮根はもしかしたらスーパーのほうが安いかもしれないと思いながらも、まあ揃えてしまおうと一緒に買う。さえきに寄って鳥もも肉、冷凍うどん、玉ねぎをカゴに入れて、蓮根を見てみるとやはりだいぶ安い。先ほど小さめのものを買ったので、追加で大きなものを買って帰る。

 昼飯にきつねうどんを作る。妻がまたポトフを仕込んでくれる。昨日は蓮根は無く、鶏肉が胸肉しかなかったので、今回はもも肉で作る。

 家族でモノレールに乗る。車窓から頂上に雲をまとった富士山を眺めていると、大きな倉庫の駐車場に虎の顔の書き割りが立てられているのに気づく。木下大サーカスがやってきて準備をしている。

 立川南駅で降りて、散策をする。最近ギターに興味を持ち出した娘と中古楽器屋に行き、ボディの小さいギターを弾かせてもらう。娘にはまだ少し大きくて弾きにくそう。その後、妻が気になっていたというケーキ屋に寄ってモンブランと杏子のムースみたいなものを買う。
 1時間ほどの散策中、息子はずっと落ち葉を拾い集めていた。駅にあった木下大サーカスのチラシを見ながら、モノレールで帰宅する。富士山には雲ひとつ無かった。

 早速ケーキを食べる。寄ったケーキ屋にモンブランがあると必ず食べるようにしている。このお店のものは栗の濃い味がするものの、それ以上の印象はない。ひとつ800円。

 晩御飯にポトフを食べる。相変わらず美味い。もも肉の分だけ味のこくが増している。蓮根も美味かった。


4日 火曜日

 倉庫へ出勤する。娘は小学校、息子はこども園へ行った。今日から皆が日常に復帰する。

 メンテナンスをしながら友人と、フリードやシエンタを買おうと思える人ってどんな人なんだろうか、と話す。まあ、ごく普通の家庭だよねという意見。すると妻からLINEが届く。東京郊外に新築建売を購入して住む家族(子供3人の5人暮らし核家族)のお宅に新車が納品、白い最新型フリード。築50年の庭付き平屋に賃貸で住む2件隣の我が家。ごく普通の家庭とはこれ如何に。


5日 水曜日

 ー扉の空いたエレベーターの中で、4歳の少女2人が自分たちと同じくらいの大きさのクロミちゃんのぬいぐるみを抱えて手招きしている。誘い込まれるように小走りなって、こちらも同じクロミちゃんのぬいぐるみを抱えてエレベーターに飛び込む。振り向くと扉の開ボタンを押して待ってくれていたのは少女たちのギャルママ。Jリーグのなんとかカップが開催されている42階のボタンをスパンコールでデコられた長い爪で押す。エレベーターの中はギンギラギンにメタリックでいたるところがスパンコールでデコってある。
 到着すると窓の向こうに、秋空の下一面茶色く枯れた芝生が広がっていて、黄色いユニフォームの選手たちがウォームアップをしている。どうやら柏レイソルの選手たちのようだ。中に入ろうとすると警備員に止められるが、中に自宅がありますと告げると通してくれる。対戦相手の白地に赤い文字のユニフォームには見覚えがないが、配色的に中央大学かもしれないと見当をつける。
 ゆっくり試合を見ている暇はないですよとギャルママに急かされる。なぜならこれから発表会の本番が迫っているからだ。自宅に戻ると大広間では宴会が行われていて、舞台上で浴衣に車掌さんの帽子をかぶった中川礼二が、配膳する中居さんたちに笛を吹き指をさしながら指示を出して、完璧に支配している。酔っ払う人たちの間に手を入れて、机の下から楽器を取り出し、袋に詰める。家族でダーディー・プロジェクターズの『Overload』を演奏するのだ。会場はここではなく近所の公民館。潰すとピヨと鳴るビニールのおもちゃのような楽器を腹にテープでくっつけて、何度も潰してその鳴りを入念に確認するー

 夢日記を書くようになってから、目が覚めても夢を覚えているようになった。

 そういえばインフルエンザになってから一度も髭を剃っていない。毎朝やることがひとつ減るだけで時間の余裕が持てる。髭には3割ほど白髪が混じっている。このまま伸ばすとどうなるのか試してみるのもいいかもしれない。防寒にもなるだろうか。

 今日は昨日とは別の倉庫で、ひとりきりでメンテナンス作業をする。チェスト、サイドボード、椅子、スツールのメンテナンスを終える。作業の間、XTC『ブラック・シー』とアート・リンゼイ/アンヴィシャス・ラヴァーズ『エンヴィ』を通して聞き直す。

  • Instagram

© 2026 SHUHEI HATANO. All rights reserved.