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山形国際ドキュメンタリー映画祭2023の思い出 |ドムドムのクリスピーチキンバーガー

30.11.2025

 映画祭期間中は1日に4、5本映画を見る。それが1週間続くわけだが、そうなると重要になってくるのはどのタイミングで食事を挟むかということになる。次の上映まで大した時間があるわけではないので、できるだけ手軽に済ませたい。それでいて長時間の鑑賞で消耗した体力も回復したい。そんな欲求を満たしてくれそうなのが上映会場のそばにあるデパート、山交ビル地下のフードエリアで見つけたドムドムハンバーガーだった。ドムドムを見つけたらできるだけ利用するようにしているという個人的な理由もあるが、これならイートインでも時間がかからず、急ぎの時はテイクアウトもできる。パッケージの象(どうむぞうくん)もかわいい。そして安い。こうして今日の昼飯はドムドムのクリスピーチキンバーガー440円にしようと決めた。

 会計を済ませ、どむぞうくんのプリントされた紙袋を受け取り、上映会場のフォーラム山形を早歩きで目指す。しばらく歩き映画館が近づいてきたところで、「すみませ〜ん」と呼びかける声がする。振り向くと先ほど会計をしてくれた女性が走って追いかけて来る。何事かと身構えながら、いやちゃんと会計は済ませたはずだと思って待っていると、「パンで挟むのを忘れました!」と思いもよらない言葉を投げかけられる。手にしていた紙袋を開けて中をのぞき見ると、クリスピーチキンだけがひとつ入っている。なるほどそういうことかと事態を理解し、そういえば渡された時に何か軽いなと思ったんだよなと反芻する。しかしよくこっちの方向にいるとわかりましたねと尋ねると、首から下げた映画祭のゲストパスを見て、もしかしたら映画館の方向かもしれないと勘で走って来ましたと、息を上げながら教えてくれる。できればお店に戻って、パンで挟んでクリスピーチキンバーガーを完成させたいという強い願望を、息を整えながら伝えてくれる。次の上映までギリギリ間に合いそうなので、申し出を聞き入れることにする。

 「昔、マクドナルドでチーズバーガーをテイクアウトした時に、がぶっとかぶり付いたところイメージしていたより上の歯と下の歯がガチンと早くぶつかって、ん?と思ってよく見ると、ハンバーグが挟んでなかったことがあったんですよね。チーズだけが挟んであって、これじゃあチーズパンじゃないかと呆れたんですが、今回はその逆でしたね、わはは。」と談笑しながらお店まで肩を並べて早歩きで向かう。

  女性はもう一度新しくチキンを揚げてパンに挟もうとするので、いやさっきのチキンで全然大丈夫ですよと告げる。内心は時間もあまりないしと思いながら。それではこちらの気がすまないと思ったのか、じゃあせめてこれでと言いながら、女性は特大サイズの紙コップを取り出し、おもむろにメロンソーダを注ぎ始める。いやいや大丈夫です、水筒がありますからとその動作を制御しようとするが、みるみるうちに鮮やかな黄緑色の液体はカップの縁すれすれまで注がれて蓋をされ、ストローを挿し込まれる。サービスですので受け取ってくださいと懇願する女性の厚意を無下にすることはできず、礼を言って受け取る。いざ上映会場へ急ごうと早歩きを始めると、半透明の蓋の下では黄緑色の液体が波打っているのが見えて、とてもじゃないが急ぐことなどできない。むしろいつもより持ち運びに細心の注意が必要で、ゆっくりゆっくり摺り足のように歩いて映画館を目指すはめになる。その道中、これも何かの縁だ、こうなったら明日からの昼飯は毎日ドムドムのクリスピーチキンバーガーにしようと心に決めた。

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