ORIGIN OF SHADOWS / 影の由来

(2017/日本/27分/フルHD/カラー/16:9/ステレオ)

監督:波田野州平
声 :藤本徹、石坂智子
音楽:清岡秀哉
製作:成徳AIR

第一回 東京ドキュメンタリー映画祭 短編部門グランプリ
ジョグジャカルタ国際ドキュメンタリー映画祭 参加作品

2016年炎天下の夏の午後、田舎道に迷った私が道を尋ねた老人は、19歳で志願して特攻隊の兵士になった話を唐突に語り始めた。そして「相撲中継が始まるので帰ります」とだけ言い残し、始まりと同じく唐突に話は終わり、老人は去った。陽炎に揺れる町を眺めながら、ひとり取り残された私は、この語りは老人ひとりの声ではなく、この土地が私に語りかけてきたのではないかと錯覚した。この土地が、亡き者の声を記録しろと私に迫ったのだと。
私はこの奇妙な経験と、この町の空き家に残された所収者不明の写真や手紙、手記を用いて、この映画の物語を考えた。それは以下のようなものだった。

終戦後、戦地で記した手記だけが、夫の帰りを待つ妻のもとに届く。そして妻は、帰らない夫に届くことのない返事を書き続けていた。

現在のこの町の風景に、決して交わることのないふたりのやり取りを、非同期でミックスすることで、かつてこの町に生きた、名もない死者たちの声を呼び起こそうと試みた。
そして、本作の完成と同時に、あの老人が亡くなったことを告げられた。

—手記だけを残し戦死した夫に、届かない手紙を綴る妻。町中に遍在する幽霊たちの声、光と影が織り成す暮らしの風景。かつてこの町に暮らしたすべての人々に供する、一篇の映画詩。—