I Remember | 私はおぼえている

これは、他にない唯一の生を生きる人間たちの記録

「あなたの人生で、いちばん初めにおぼえていることを教えてください」という呼びかけから、鳥取県倉吉市とその近郊に暮らす10人の古老たちのおぼえていることが滔々と語られる本作は、何よりもまず、聞くことの映画である。
カメラを前に語られる、物心ついた時に見た火事の記憶、貝殻節と共にある労働の記憶、そして日常と結びついた戦争の記憶といった、聞き手がいなければ語られることのなかったであろう話に耳を傾けていると、時に見ず知らずの記憶に親しみを抱き、時にわかり得ない苦しみがあることを知り、その3時間44分に及ぶ語りのうねりに魅惑されていることに気づくだろう。
そして語りと共に映し出される、濱谷浩の傑作写真集『裏日本』を彷彿とさせる鳥取の海辺や山間の風景も、この映画の11人目の語り手となり、土地の物語を雄弁に語り始めるのを見逃してはならない。

本作は山形国際ドキュメンタリー映画祭2021で「小川紳介の『ニッポン国古屋敷村』を思い起こさせる」と評され、またジョグジャカルタ国際ドキュメンタリー映画祭2022では「孤独や孤立に対処する方法や、その孤独を笑い楽しむことさえ学ばなければならない現代に、多くの示唆に満ちた驚くほど豊かなつづれ織りである」と最高賞のグランプリを受賞し、国際的にも評価された。
記録集団・現時点プロジェクト製作のもと、監督を『影の由来』や『それはとにかくまぶしい』など、世界の映画祭が注目する、新しい形のドキュメンタリーを発表し続ける波田野州平が務めた、初の長編ドキュメンタリー映画である。


私はおぼえている
日本 | 2021 | 日本語 | カラー | デジタル・ファイル | 224分
監督・撮影・編集:波田野州平
出演:小谷重信、濱根良太郎、小椋久義、牧野順子、牧田智子、浜川千代子、仲倉壽子、藤原喜代江、長田はつ子、竹部輝夫
製作:現時点プロジェクト

作品解説
カメラを前に「おぼえていること」を語る10人の登場人物。戦前から現在まで、彼らは生まれ、育ち、働き、新しく家族を持ち、いまにいたる、それぞれの記憶の断片が鳥取の土地の記憶を伴い1本の映画となる。『ニッポン国古屋敷村』(1982・小川紳介) を彷彿とさせる本作は、個々の人々による語りの媒介者であり伝承者である。(山形国際ドキュメンタリー映画祭2021公式カタログより)

監督の言葉
10人の老人たちに、最初の記憶から現在に至るまでの記憶を聞くことにした。彼らはその長い人生を振り返りながら、わからんだろうと何度も私に言った。その通り、彼らの人生はあまりに固有で、軽々しくわかると言えることなどひとつもなかった。そして私は、目の前にいるこの人は、私の知らない膨大な時間を使って今この場所までたどり着いたのだ、と実感した。これは、他にない唯一の生を生きる人間たちの記録です。

受賞
ジョグジャカルタ国際ドキュメンタリー映画祭2022 (インドネシア) 最優秀国際長編ドキュメンタリー賞

セレクション
山形国際ドキュメンタリー映画祭2021 - ワールド・プレミア


I Remember
Japan | 2021 | Japanese | Color | Digital File | 224 min
Director, Photography, Editing: Hatano Shuhei
Cast: Shigenobu Kodani, Ryotaro Hamane, Hisayoshi Ogura, Jyunko Makino, Satoko Makita, Chiyoko Hamakawa, Toshiko Nakakura, Kiyoe Fujiwara, Hatsuko Nagata, Teruo Takebe
Produced by: Genjiten Project

Notes
Ten people face the camera and talk about “remembering.” This film is made up of their individual fragments of memories from lives spanning the prewar years to the present, from birth and childhood to their work and experiences starting families all the way up to today, along with memories of the Tottori region. In the tradition of Ogawa Shinsuke’s Furuyashiki: A Japanese Village (1982), the film is a vehicle to mediate and transmit the words of these individuals.

Director’s Statement
I decided to ask ten senior citizens to share their recollections, from their earliest memories through the present. As they reflected on their long lives, they repeatedly used the phrase, “you probably wouldn’t understand.” Their experiences were in fact very specific. There was nothing that could be called plainly understandable. I began to sense the vast time beyond my awareness that it had taken these people to arrive in the present moment at this place in front of me. This is a record of people living unique and singular lives.

Award
Festival Film Dokumenter 2022 (Indonesia) - Best International Feature-Length Documentary

Selection
Yamagata International Documentary Film Festival 2021 (Japan) - World Premiere